眠っている2本のギターを合体!即戦力のギターを作っちゃおう。
音楽を始めた頃に買ったギター、リサイクルショップで買ったジャンクギター。当時はよく触ったけど、今は全然轢いてないなーっていう1本。長く音楽を親しんできた人ならお持ちじゃないでしょうか。
そんな私もジャンクまがいのギターがちょうど2本ありました。この2本を上手く利用して、もう一度弾きたくなるギターとして復活させたい。そんな気持ちでギター改造プロジェクトを立ち上げました。
素材となるギターの紹介
①FERNANDES APG-85S
このギターは本体に大きなキズが入っていることを理由にジャンク品として置かれていたものを購入 (9000円)。ギターの傷は再塗装が必要なぐらい大きなものでしたが、私が惹かれた理由は、このギターに搭載されているサスティナーでした。当時ハマっていたTALISMAN (タリスマン) のギタリストで、ARCH ENEMY (アーチ・エネミー) にも在籍したフレデリック・オーケソンが、サスティナーを駆使した咽び泣くようなソロを披露しており、自分でも触ってみたいと思ったのが発端です。いざ、ギターを弾いてみたところ、サスティナーによるロングトーン、フィードバック機能は楽しいの一言。一方で鳴りの悪いボディとネック、こもったサウンドのリアピックアップ等、基本性能に満足がいかず、触る頻度が減っていきました。
②謎のUSAジャンクギター
私は数年前、仕事の都合で半年間アメリカに赴任。その間音楽を楽しみたいと思って購入したギターです。現地の同僚に「ギターを安くゲットしたい」と相談したところ、Craigslist (クレイグスリスト) をオススメされました。日本で言うところのフリマサイトで、商品の受け渡しは直接手渡しというシステム。このギターは2万円程度と割安だったので、売り手の方に交渉。実際見てみるとキズも多く、改造もなされていて、なかなか酷い状態でした。…しかしながら、少し薬をやってそうなヤバ目の売り手に対して断る勇気もなく購入。杢目の綺麗なボディ材は気に入ったものの、リア一発でサウンド・バリエーションが狭く、Kahler (ケーラー) ブリッジ特有の短いサステインに不満を感じていたため、米国から帰国してからは触る機会が減りました。
改造計画
ボディの鳴りが不満なギターと杢目の良いギター。サステインが短いギターとサスティナー搭載モデル。これってそれぞれ組み合わせたら、ちょうど良いギターになるんじゃないの??
つまり、USA製ギター本体にサスティナーを載せちゃおう!!そう思って、改造を進めるための乗り越えるべき課題をリストアップしてみました。
改造における課題をリストアップ
■ USAギターはリア一発
→ サスティナーシステムはフロント位置にドライバーを載せる必要があり、フロントピックアップ用のキャビティが必要。
■ サスティナー用のバッテリーBOX
→USAギターはパッシブピックアップ仕様であったため電池不要。電池ボックスを増設する必要あり。
■USAギターはワンボリューム
→サスティナーにはスイッチに加え、サスティナーレベルを制御するためのツマミもあるため、ボディにツマミやスイッチを増設するための加工が必要。
■新設するリアピックアップとサスティナーの相性
→サスティナーを駆動させるには、出力の高いピックアップが必要とのネット情報。今回用いるピックアップはいわゆるヴィンテージタイプのサウンドを狙ったものであり、ハイパワーと呼べるほどの出力がありません。正常に機能するかは賭けに近い状況。
■配線作業の経験が乏しいしかしたことがない。
→何を隠そう、私は中学校の授業でハンダをして以来、ほとんどハンダに関わらず生活したこともあり、配線作業は素人。やばい。
…課題だらけ。やり方もわからない。手探りの中調査を行うことにしました。
下調べと必要なもの
ズブの素人の私はギターの改造・加工が何たるかを理解していないため、まずは参考書を入手。がちがちの専門書ではなく敷居が低くなるように、素人に歩み寄った内容になっているのが素敵な一冊です。
この書籍によると、キャビティ加工にはガイドとトリマー、細かい加工にはやすりやドリルも必要になるとのことでした。
トリマー 5000円~
ドリル 1000円~
やすり 500円/本~
案外費用かかるし、成功するか解らない改造に投資するのもなーと弱気になってしまいました。
プロに改造依頼した場合の費用
いっそプロに改造依頼してしまおう…と考えた私は即行動。
私の住んでいるところは都会でもなく、リペアを専門としているショップは県内でも片手数えられる程度しか存在しません。その中でもプロユーザーも使用しているぐらいの知名度を誇る某ギター工房に問い合わせ、改造の内容を伝えて見積もってもらいました。
その見積り結果は、なんと5万~。かつ納期は2か月以上。これは無理だ…。やはり自力でやるしかないと思いとどまりました。
救世主現る!?
職場の中でちょっとした部署異動をした私に、新たな出会いがありました。先輩の1人が自力でログハウスを立てたり、様々な金属加工を含めたDIYが得意だというのです。
当初はギター制作は別のスキルが必要だろうし、頼むのは難しいかなーと思いましたが、仕事で様々なスキルを駆使して、色んなアイテムを作り出す先輩を見ていると、案外ギターでもなんとかなるのでは…!? と思うように。
思い切って相談してみたところ、「興味あるし、非常にチャレンジングで楽しそう」と前向きなコメントを頂きました。話を詳しく聞くと、自宅には自作のCNCルーターを所有し、電装系も得意とのこと。
最初は、私にとって大きな壁になりそうなキャビティ加工だけ依頼する予定でしたが、「希望があれば、何でも言ってね。出来そうなやってみるよ」…とのお言葉に甘えて、私の要望を全て伝えておきました (仕事で使うようなプレぜン資料を作成しました(笑)。
ついに完成!!改造ギターの出来は??
改造をお願いした先輩も忙しいお方。週末にしか作業できないとのことでしたが、作業日数2日で完成したと連絡を頂き、職場でギターを受け取りました。
「サスティナーが動くか分からないし、コイルタップにしてみたけど、ちゃんと機能するかな?試してみてね」と渡されたギターはほぼ完成状態。 これでちゃんと音出たら、もう完成の領域です。
さっそく弦を張り、音出ししてみたところ、サスティナーは問題なく作動。更に、すべてのスイッチ、ツマミも機能しました(すごい)。細かいパーツは準備していなかったので、色がマッチングしていなかったり、サスティナー動作確認用ランプが見えるようにバックパネルに穴を加工する必要があったりと、若干の作業は残っていましたが、そこは自分でも行い、ギターは完成しましたとさ。
プロのリペアマンからの見積もり価格を知っている手前、そのことを正直に先輩に伝えました。その情報を聴いた先輩は『自分も楽しめたし、コーヒー3本ごちそうしてくれたら良いよ』…
…コーヒー3本!?
先輩、ありがとうございます。今後もお仕事頑張ります…。
サスティナーの調整
サスティナーシステムはフロントピックアップの位置にドライバーを配し、リアピックアップには出力の高い専用ピックアップが用意されています。今回のように自分で準備したピックアップを使用する場合は、サスティナーシステム側の調整が必須。基盤側にある4つのツマミの役割と調整方法について説明します。
ちなみに、説明書はインターネット上でも公開されています (ココ)。今回のようにギターから改造を必要とする場合は、必ず熟読することをオススメします 。以下はマニュアルの情報を抜粋すると共に、私のギターのセッティングについても記載しておきます。
(オートマチック・ゲイン・コントロール)
サスティナーの入力感度を調整するトリマーです。右に回すと入力感度が増し、サスティナー回路はより小さな音にも反応しやくなりますが、発振が起こりやすくなります。100%を基本設定とします。今回のギターでは、スタンダードモード使用時において異音が発生しないレベルを探す形で調整。60%程の設定に収まりまった。
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104:VBC
(バイブレーション・コントロール)
AGCが動作するしきい値を調整するトリマーです。右に回すとより強力なサステインが得られますが、
消費電流が増加し、出力波形に歪みが発生しやすくなります。50%を基本設定とします。今回のギターの場合、高音弦のハイフレット側でサスティナーの感度が最も悪かったため、この位置で十分サスティナーが稼働する設定を探しました。結果、40%程度がベストと判断しました。
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203:MBC
(モード・バランス・コントロール)
スタンダード・モードのサステイン・レベルを調整するトリマーです。右に回すとスタンダード・モードのレベルが下がります。0%を基本設定とします。ハーモニクス・モードのサステイン・レベルは固定です。これは基本設定のままでOKとしました。
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474:FGC
(フロント・ピックアップ・ゲイン・コントロール)
サスティナーOFF時のフロント・ピックアップ(CD-100F)の出力レベルを調整するトリマーです。右に回すと音量が増加します。CD-100Fの高さは基本設定。こちらは基本的にはフルで音量バランスもOKとなりました。
まずは上記マニュアルの通りにツマミを合わせ、発振具合を確認しつつ微調整。誰でもできる簡単な作業だったので、是非自分でトライしましょう。
今回採用したリアピックアップ “Amalfitano”
今回採用したリアピックアップは、アメリカ赴任時に購入した特別な一品。アメリカのピックアップメーカーとして知る人ぞ知るAmalfitano Pickups (アマルフィターノ・ピックアップ) のJerry Amalfitano氏に相談し、カスタムワウンドしてもらったハムバッカータイプのピックアップとなります。
ピックアップの仕様については秘密 (笑)。
Amalfitano Pickupはハイゲインを得意とはせず、ニュアンスをしっかり出せることが魅力です。ある特定の高音領域が強く出る傾向にあり、その成分が『反応が早い』 『バイト感が出る』という感覚につながっているように思います。この反応の速さは私が所有しているピックアップの中でも圧倒的なので、世のハイブランドギターに採用されているのも納得のクオリティ。また、コイルタップした際のサウンドも非常に自然で、幅広い音色を表現することができます。
日本ではAddictoneさん (HP:http://www.addic-tone.com/) で取り扱いされており、有名どころではMatt Schofield (マット・スコフィールド) 氏、ネオソウルギターで人気のYouTuberソエジマトシキ氏も使用されているようです。私は相談したことはありませんが、Addictoneさんは細かい仕様についても相談にのってくれそうな感じなので、興味がある方は是非問い合わせてみてください。
肝心のサウンドをチェック!
今回弾いてみた曲 TREAT『Fatal Smile』
TREAT (トリート) は80年代から活躍するスウェーデンのハードロックバンド。かつては“北欧のBon Jovi”と呼ばれ、キャッチーなメロディが魅力のバンドです。
この『Fatal Smile』は北欧らしいメロディが印象的な一曲。ギターソロも歌メロに負けないキャッチーなメロディが魅力。構築された美しいフレーズの数々はハードロック界に残る名演の一つだと思います (完全に再現できていなので、オリジナルも是非聴いてみてください)。
TREATは現在も第一線で活躍。アルバムをリリースする度に来日する等、人気は衰えることを知らないどころか勢いは増す一方!新作リリースも待たれる中、過去作品のCDも一斉に再発されることとなりましたので、未だチェックしたことがない方は、是非チェックしてみてくださいね♪
特に、今回取り上げた『Fatal Smile』が収録されている 『Organized Crime (オーガナイズド・クライム)』 は再結成以前の作品の中でも最高傑作とされる人気作。メロディックロックファンはマストですよ。
本作からのYouTube動画が見当たらないので、最近の動画を一つ貼っておきますね♪