抵抗式アッテネーターの頂上決戦 Dr.Z vs Vinetone!音量の減衰効果と音質への影響について調査してみたよ。
ヴィンテージアンプ含む一部のアンプではマスターボリュームがなく、ボリュームを上げないことには十分な歪みや温かいトーンが得られないものも存在する。そういったアンプの本領を発揮しつつ、実用的な音量まで下げるためのツールがアッテネーターです。
近年アンプ・スピーカーシミュレーターの発展も著しく、ロードボックスの台頭も目ざましいのも事実。しかし、実際にアンプを鳴らしたい派のギタリストにとって、アンプにつなぐだけでナチュラルドライブが得られるアッテネーターは今も愛される存在と言えます。
今回はギター用アッテネーターの中でも人気の高い2機種を比較。頂上決戦を制するのはどっち!?
続編の音質比較にフォーカスした記事はこちら。
アッテネーター比較:Dr.Z vs Vinetone
Dr.Z Air Brake vs Vinetone Power Attenuator
アッテネーターにおいて注目されるのは “音質を保ったまま、いかに音量を下げることができるか” に尽き、インターネット上でも最強の機種について議論が繰り返されています。その中でも、今回取り上げるDr.Z Air BrakeとVinetone Power Attenuatorの2機種は音質面で高い評価を得ている代表格です。
Dr.Z Air Brake
製品名からも分かるとおり、Dr.ZはKen Fischerからライセンスを受ける形で製造販売しているため、配線や設計面もオリジナルのTrainwreckに極めて近いことが予想されます。
Vinetone Power Attenuator
本製品は日本国内のビルダーがTrainwreck AirBrakeの回路構成を参考に作り上げたアッテネーター。日本のオークションサイトやビルダーさんに直接オーダーすることで購入可能な知る人ぞ知る良品。
アッテネーター比較① : 製品スペック
これらの2機種のスペックについて、以下の表にまとめてみました。
今回の記事では、アッテネーターに求められる “音質を保ったまま、いかに音量を下げることができるか” を検証すると共に、インターネット上でも話題にあがるアッテネーター本体の発熱 (蓄熱・排熱効率) について検証してみました。
アッテネーター比較② : 音量の減衰効果と音質への影響
まずは早速比較動画を見てみましょう!アッテネーターのツマミをいじりながら音量・音質の変化をチェックしてみました。
■ ギターアンプから出力された音をSM57 (SHURE) で集音
■ 音はEQやエフェクトは施さず、そのまま
実際チェックいただいて如何でしょうか? 減衰量という観点ではVinetoneに軍配があがり、特に音量可変となる設定 (Dr.ZではBedroom Level, VinetoneではValuableと表記) では、かなり音量を絞れる事が分かります。
iPhoneのアプリを使って、実際音量チェックした結果をグラフに示しました (下表)。Vinetoneはカタログ値どおり。Dr.Zは-30 dBには到達しない結果でした。2機種の減衰量の差は波形を見ても明確ですね。
肝心の音質について、一般的に“アッテネーターを使うとハイ落ちする (高音が削れる) ” “フィルターがかかったように、音質が変わってしまう” と言われることが多いですが、評判どおりこの2機種に至っては音質変化はかなり小さいことがわかります。注意深く聴くとVinetoneの方が若干ハイ落ち印象ですが、パッと聴いた感じでは、その差を感じるのも難しいレベルかと思います。
アッテネーター比較③ : アッテネーター本体の発熱
抵抗式アッテネーターは、設計上どうしても発熱してしまいますが、インターネット上でも『手で持てないぐらい、本体が熱くなる』 というコメントもチラホラ…。
そのあたりも検証すべく、アッテネーターを使用し続けた際の本体温度を測定してみました。
■ アッテネーターは最大減衰量となるように設定
■ 20分間、同じ条件でアッテネーター / アンプを稼動させる
■ 使用時間ごとに本体温度を測定 (非接触式の温度計使用)
なんと、2機種共に20分間で60℃以上の温度に達してしまいました。特に、Vinetoneは70℃超えとなる脅威の発熱を記録。本当に素手で持つのは困難な熱さでした…。
Dr.Z Air Brakeはサイズが大きすぎることが評価を下げる一因となっていますが、大きい筐体と抵抗器を宙吊りにする設計により、抵抗器から本体への熱伝導を抑えると共に、排熱性を向上させている事が推察されました。
アッテネーターの比較検証を終えて
今回、60Wのギターアンプを使用、Volume / Gain共に12時より低い設定で検証を行いました。『自宅で音量を抑えつつ、アンプ本来のサウンドを引き出す』 使用方法であれば、これら2機種は非常に有効であり、どちらも自信を持ってお薦めできる良品でした。
今回の検証結果より、どちらかを選ぶとすれば、私はVinetoneを推奨します。多くのユーザーがアッテネーターに求める“音量の減衰” がしっかりコントロールできることを重視しました。
しかしながら、『100Wクラスのギターアンプをフルテン、真空管をフルパワーでドライブさせつつ、室内で演奏できるレベルまで音量を下げたい』という用途では、減衰量や発熱の観点から、この2機種は不向きであり、ユーザーの期待に応えることは正直難しいかと考えます。
フルパワーでアンプを鳴らしたい!!…という方には、減衰効果の高いアッテネーターやロードボックスもあるので、そちらを候補に検討してはいかがでしょうか (THDのHot Plateあたりが代表格でしょうか)。