日本発のオリジナルミュージカル『怪人と探偵』。
作家から歌手まで、正に役者が揃ったサウンドトラック。
世は空前のミュージカルブーム。ミュージカル界出身の役者もドラマ等で目覚ましい活躍をしていますよね。そんなミュージカルも世界の名作は数あれど、“日本発” となると数える程度。
昨年2019年に上演された『怪人と探偵』は原作、制作に関わる多くを日本人が手掛け、世界の名ミュージカルに負けない作品となっています。演技はもちろん、ミュージカルを支える楽曲の数々も非常に素晴らしい作品。そのサウンドトラックCDは一般流通していない現状ですが、多くの方に届いてほしいと思い、今回記事にしました。
ミュージカル『怪人と探偵』サウンドトラック
ミュージカルの製作陣について
作詞家としても知られる森雪之丞氏が構想に5年をかけた『怪人と探偵』。彼は世界の名作ミュージカルは数多くある中、日本発の素晴らしいミュージカルを作り上げたい…そんな思いの中、昨今ミュージカル界でも精力的に活動。活躍の幅を広げています。
その森雪之丞氏とタッグを組み、演出・監督を務めたのは、俳優としても知られる白井晃氏。二人の世界観と個性豊かな俳優たちの素晴らしい歌唱・演技が加わり、正に世界に誇れる最高のエンターテイメントに仕上がっています。今回はサウンドトラックCDでは楽曲、パフォーマンスにフォーカスを当ててレビューしたいと思います。
ミュージカルのメインキャスト
『怪人と探偵』は怪人二十面相、そして永遠のライバルである探偵・明智小五郎の二人を中心にストーリーが展開されますが、その二人が奪い合うのは“愛”。そして、その恋の相手となるのが令嬢リリカです。
そのキャストは以下の通り。
高校在学時からその才能を発揮し、すぐさまメジャーデビュー。ドラマの主題歌として取り上げられ、注目を集めました。歌手としての活躍と並行し、ミュージカル俳優としても活動を開始。歌唱力に加え、その演技力にも定評があり、日本のミュージカル界には欠かせない存在となっています。
その端正な顔立ちから、2002年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストの最終選考者に選ばれ、その後、ミュージカル・テニスの王子様での活躍で大きな注目を浴びます。その後、ドラマ・映画にも多数出演する傍ら、歌手としてコンスタントにCDリリースしています。元々、ミュージカル俳優として注目を集めたこともあり、ミュージカル界隈での活躍は目覚ましく、そのルックス、男らしい歌声を武器に確固たる地位を築きつつあります。
『カノジョは嘘を愛しすぎている』のヒロインとして華々しくデビューして以来、J-POP界の新たな歌姫として活躍しているのは周知の事実。初期は亀田誠治氏プロデュースの下、幅広い世代にアピールするポップソングを歌うスタイルでしたが、昨今ではミュージカル風、ダンサブルな楽曲にも取り組み、ダンスも披露。より幅広い層のファンを獲得しています。愛らしいルックスに加え、若手にして驚異的な歌唱力にて音楽界、ミュージカル界のニューヒロインの立ち位置を築いています。
このミュージカル界を支える実力派の3人が共演。それぞれの楽曲を歌いあげるというだけで興味津々でしょ?
楽曲を手掛けたのは…
楽曲のプロデュースは上記の森雪之丞氏。森雪之丞氏は作詞家として著名な存在であり、今回も作詞を中心に手掛けています。今回森雪之丞氏のパートナーとして選ばれたメンバーが、個人的には大きなポイント。スリーピースピアノロックバンド “WEAVER” のリードシンガー、ピアノ兼リーダーの杉本雄治氏です。
WEAVERは普遍的なポップセンス、確かな演奏技術、ライヴパフォーマンスで人気を博していますが、その中心人物かつメインコンポーザーである杉本氏は、小学生のころからプロピアニストになることを視野にピアノの練習に取り組んできたとのこと。磨かれたピアノの演奏技術、ジャズやクラシックなどを広くカバーする音楽センスを武器に、ミュージカル音楽も手掛けるようになりました。
森雪之丞氏と杉本雄治氏がタッグを組むのは、おそらく2013年の舞台『SONG WRITERS』以来。今回は江戸川乱歩の名作に挑む形で再度タッグが組まれました。
作品レビュー
ミュージカルのプロローグを飾るのは変拍子が効いたM1『怪人襲来』。怪しげなメロディと複雑なリズムがプログレ・ロックを彷彿させ、不意を突かれる導入が刺激的です。
続くM2『謎と蜜』。この曲は、中心人物の一人である明智小五郎が登場するシーンで使われる楽曲で、このミュージカルを印象付ける謎めいたムードと哀愁のメロディ、そこに加藤和樹氏の男前ヴォイスが加わることで、2分弱ながらも非常に印象的な一曲になっています。
一方のM3『蜜と謎』はもう一人の中心人物、怪人二十面相の登場シーンで使用される一曲。M2と同じモチーフから成る一曲ですが、怪人の余裕を感じさせる軽快でジャジーなアレンジが施され、また違った魅力で聴き手を引き込んでくれます。
M5では歌謡曲のようなムードの中、哀愁のメロディが紡がれる『東京ランデヴー』。しっとり歌い上げる大原櫻子の歌唱も素晴らしい一曲です。
本作のメインテーマと言えるM7,10,13,16 『微笑みの影』。杉本雄治氏らしいキャッチーなメロディを持つバラードを、メインキャスト3人が入れ替わり歌い、時にはデュエット形式で美しいハーモニーを聴かせてくれます。同じモチーフのメロディに、ストーリーに合わせた歌詞が乗せられ、それぞれの人物の心情に合わせた感情溢れる歌唱は圧巻。三者三様、迫真の歌唱は必聴です。
本作のラストを締めくくるM23『魔法の滅びたこの世界で』。作曲した杉本氏自身も、その歌詞を絶賛している通り、Aメロの歌詞数フレーズで令嬢リリカの生い立ちを表してしまう森雪之丞氏の才能は非常に素晴らしく、聴き手の印象に残る言葉選びのセンスに脱帽です。この歌詞と連動するように叙情的に歌い上げる大原櫻子の歌唱も素晴らしく、ラストにふさわしい一曲。
その他楽曲もミュージカルに合わせたリズミカルなもの、コミカルなものとバラエティに富んでおり、聴きごたえ十分。わかりやすく印象的な歌詞も手伝い、舞台を見ていない聴き手にもストーリーがはっきりと浮かび上がる素晴らしいサウンドトラックCDです。
本CDの購入方法
現在、このCDは一般流通されておりませんが、ASMARTでのオンラインショッピングで入手できます。価格もCDとしては割高の4,180円 (税込)ですが、上記の通り素晴らしい作品なので、少しでも多くの方に届くことを願っています。この記事でもいくつか貼り付けた動画に魅了された貴方、是非チェックしてみてくださいね♪