アコースティック・ギター収音用マイクを比較してみたよ。
アコースティック・ギター用のピックアップやプリアンプも日々進化を続けていますが、生楽器の持つ空気感をそのまま収音するためにはマイク録りが有効かつ手軽な手段として、プロの現場でも好まれている現状です。
やはり生楽器の録音ともなると、プロ・アマ問わずマイク収音にトライしたい…。マイク録りの方法について様々な検証を行う前にステップとして、マイク比較を行ってみました (ついでに後付けピックアップも)。
過去記事では、エレキギターのアンプサウンド収音についても比較しているので、是非そちらの記事も読んでみてくださいね♪
→ 格付けチェック! ギターアンプサウンド収音用マイクの比較
アコースティックギター収音用マイクの比較
さっそく比較動画を見てみよう!
皆さん、マイクやピックアップによるサウンドの違いを感じ取れましたか??
今回使用したマイクは以下の通り。エントリーモデルのダイナミック・マイク、コンデンサー・マイクとミッドクラスの価格帯の真空管コンデンサーマイクの3種で比較しています。
→ ジャンルを問わずギターアンプ録りに使用されてきた、定番中の定番と言えるダイナミック・マイク。
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■ sE electronics x1
→ エントリークラスのコンデンサーマイクとして人気のモデル。同社のリフレクション・フィルター、ポップガードとの同梱セットの印象が強く、そのお得感から購入する方が多いように思いますが、マイクそのものの基本性能についても高い評価を受けている。
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■ Lauten Audio LT-321 Horizon
→ 価格帯としてはミッドクラスに相当する真空管コンデンサーマイク (私にとってはハイエンドですが)。某プロミュージシャンによると『オールドのNEUMAN U67のような質感』と称される。当時高い評価を得たものの現在は廃版扱い。以下のリンクは同メーカーの現行真空管コンデンサーマイクです。
マイクの比較検証方法
今回比較するにあたり、アコースティック・ギター1本で、アルペジオやストロークが含まれるフレーズを演奏。マイクの設置や録音方法については以下の通りとなります。
② マイクとギターの距離は30cm程度。
③ マイクプリや、DAW上でのEQ、エフェクト等は一切なし。
演奏セットアップ例は下図の通りです。
それぞれのマイクの特性に合わせて、マイクの位置や角度を調整した訳ではないので、それぞれのマイクの本領発揮できているか…という点については、私自身疑問が残っており記事にするのを少し躊躇しました (笑)
アコースティック・ギター録音に向くマイク
マイク変更時のサウンド変化について
それぞれのサウンドについて、マイク別に考察していきたいと思います。
アコースティック・ギター特有のふくよかなサウンド…という感じではなく、すっきりとしたサウンドが特徴。言い換えると余計な帯域の音が含まれない分、狙いのサウンドを録音しやすいと言えます。
今回使用したギター、設置距離も関わりますが、少し低音が強調されている印象を受けます。よりバランスの良いサウンドを狙うに当たっては、マイクとギターとの距離をもう少し離す、もしくはマイクの狙う位置をサウンドホールから外すことが有効かと思います。
コンデンサーマイクらしく、アコースティック・ギターサウンドの空気感も収音されています。また、sE Electronics x1はアコースティック・ギターによらず、ハイが際立ったサウンドが特徴であり、アコースティックギターのキラキラ感をうまく表現しています。ダイナミックマイクに比べると広い帯域をカバーしていますが、このキラキラ成分を活かす形でミックスを行えば、それほどEQ処理は必要としないのではないかと思います。
コンデンサーマイクらしく、アコースティック・ギターサウンドの空気感も収音されています。また、真空管の効果もあってか、より温かみのあるサウンドとして収音されている反面、きらびやかさに欠ける印象。マイクの設置位置でのサウンドメイキングに加えて、EQでの中低域をカットすることでスッキリしたサウンドを狙うと、その他音源とのバランスが取りやすくなるかと思います。その一方で、ソロギターのようなジャンルであれば、真空管ならではの持ち味を活かしたサウンドも、一つの魅力になるのではないでしょうか。
アコースティック・ギター用ピックアップの実力
今回、マイクの比較に加えて、ギターの取り付けるタイプの後付けピックアップも同様にレコーディングしてみました。ピックアップはL.R.BaggsのAnthem SLです。この機種はブリッジ裏面に貼り付けるタイプのマイクと、ブリッジ・バーの下部に挿入するピエゾの二種をブレンドし、リアルなサウンドを狙ったものとなります。
結果、マイクで収音したサウンドに比べて、薄っぺらく空気感のないサウンドになってしまっています。また、高音のキラキラ成分が感じられない、低音が効いたサウンドも楽器の本領を発揮していないと言えます。
上記の通り、マイクのブレンド比を上げることで大幅にサウンド向上するのは間違いありませんが、常にハウリングの問題が付きまといます。やはり、この手のピックアップはプリアンプ等で補正し、よりリアルなサウンドを目指す…というのが、現状ベストなのではないかと思います。
アコースティックサウンド収音における野望
さて、今回の検証した通り、ダイナミック・マイクとコンデンサー・マイクではそのサウンド特性が異なり、それぞれのベストな設置方法やEQ、エフェクト処理も異なってきます。
まずは、『マイクの設置方法の違いによって、どれぐらい音が変わるのか…』。この点について、次回は検証してみたいと考えています。それぞれのマイクが優秀であっても、やはり自分の耳で聴くアコースティック・ギター本来のサウンドと、マイクで収音されたサウンドは微妙に異なります。教本や雑誌にも様々な情報が掲載されているので、それまでに色々と研究してみますね♪