こんな感じの内容です!
マイクプリのオペアンプを交換して弾き比べたよー。
音楽機材に入力された音を増幅、歪み成分を加えるといった働きをするオペアンプ。とても小さいパーツながら音質への影響は大きく、交換も比較的簡単に行えることから、個人でカスタマイズすることも…。今回はマイクプリのオペアンプを交換し、音への影響を比較してみました。
過去に、マイクプリ内の真空管を交換した時のサウンド変化についてチェックしたことがありましたが、今回は同じマイクプリをギターのライン用DIとして使用。この用途では真空管 (12AX7) に加えてオペアンプ交換時のサウンド変化も大きく、面白い比較音源が取れたので紹介したいと思います。
以前のマイクプリを用いたギターアンプサウンド収音に関する過去記事はこちらです。
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https://soundville.net/2020/07/12/tube_micpre/
真空管交換時の歪みサウンドメイキング、音質への影響について検証した過去記事はこちら。
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https://soundville.net/2021/02/23/12ax7_comparison/
マイクプリについて
マイクプリとは?
マイクプリ…とはマイクプリアンプの事であり、マイクで拾った音を増幅させるための役割を果たしています。マイクプリの歴史は長く、現在でも銘器として名高いNEVE (ニーヴ) あたりがその代表格です。
マイクプリに求められる基本性能としては、低ノイズかつヘッドルームが広いことが挙げられますが、それ以上にマイクプリを通すことで得られる “音の質感” が代え難い魅力であり、現在でもプラグインは勿論、ハードとしてプロの現場で活躍しています。
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宅録におけるマイクプリの必要性
『プロの現場で使われているのは分かったけど、それってアマチュアでも揃えた方が良いの??』…そんな事ははありません。この記事の冒頭でも述べましたが、昨今DAWや機材の進化しているので、DTMerの皆さんが既にお持ちのオーディオI/Fにもマイクプリの機能が含まれています (元音が小さい録音であっても、ツマミ一つでレベル調整できるでしょ??)。
アマチュアでもマイクプリを導入するメリットは、やはりマイクプリ独特の “音の質感” となります。これまで歴史を変えてきた数々の名盤もマイクプリを使用してレコーディングされてきた事もあり、“憧れの、あの質感がどうしても欲しい” という方は導入を検討してみても良いかと思います。
私が所有するマイクプリ
前項で “アマチュアが敢えて持つ必要性はない” と断言しているのに、実は私、マイクプリを所有しています。かつてMTR (マルチトラックレコーダー) を使用してレコーディングしていた際、適切な音量レベルの音が得られず、マイクプリを導入しました。
私が所有するマイクプリはStudioProjects VTB1という真空管を搭載した機種で、当時2万円を切る価格で販売されていたものです。ネットでの評判がよく、安価のため改造をしてより良い音を目指す方もいらっしゃったようです。
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マイクプリとしては安価なモデルですが、真空管による音の色付け可能かつ、チューブサウンドとのブレンド比率がコントロールできる優れモノ (詳細な仕様はSOUND HOUSEさんの商品ページをご参照ください)。
今回の実験内容
マイクプリをライン入力用DIとして活用
このマイクプリ、マイクだけでなくシンセやリズム・マシンなどの音源系からエレキギターのライン入力用DIとしても使用可能です。また、内蔵されている真空管は12AX7(別名ECC83、7025)。多くのギター・アンプ等でプリアンプ部に用いられる真空管であり、比較的歪みやすい事が特徴の1つでもあります。今回はマイクプリとしては歪み過ぎなのでは?…と思わせる本機の特性を逆手に取り、歪みエフェクターとして活用してみようと考えました。
VTB1のカスタマイズ
本機は真空管、オペアンプにアクセスしやすく、さまざまなパーツを交換してカスタマイズできることが魅力のひとつ。今回は以下のオペアンプを比較。初期型の標準パーツと現行LOTのパーツも含まれているので、その音質の違いについてもお楽しみ下さい。
VTB1の中にはサウンドに関わるオペアンプが4個も搭載されています。そのため、本実験では全てのオペアンプを交換する事にしました。
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ただし、本機のはんだは非常に頑固で、はんだ吸い取り線で取り除こうと試みましたが、かなり苦戦しました。基盤の裏面からはんだを除去すると共に表側に回り込んでいる分も少し溶かす作業が必要かも?
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自信のない方は熟練者の方に依頼し、ソケットを取り付けてもらいましょう!
※ 実は、この機材を改造している際に壊してしまいました (カスタマイズしやすいのが魅力の一つである本機。イジり過ぎは注意ですね…)。結果、もともと使用していた3桁ロットの初期型と、5桁ロットの現行機を所有することになりましたが、搭載されている真空管やオペアンプの仕様が全く異なる事が判明。その音の違いは如何に!?
今回比較を行ったオペアンプは以下の通り。
■ 現行品標準パーツ
- 新日本無線 JRC NJM5480D × 2個
- 新日本無線 JRC NJM2082D × 1個
- 新日本無線 JRC NJM2114D × 1個
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■ 初期ロット標準パーツ
– Burr Brown OPA2134PA × 4個
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■ 新日本無線 JRC NMJ062D × 4個
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■ Analog Devices OP275 × 4個
それぞれの特徴について、入手経緯や私の所感も交え説明していきます。
今回比較したオペアンプについて
それぞれの特徴について、入手経緯や私の所感も交え説明していきます。
オペアンプのラインナップ
現行品標準パーツ
買いなおした現行VTB1の標準品として取り付けられていたオペアンプは新日本無線の物が3種類併用されていました。Burr Brown (現Texas Instrument) のオペアンプが中国では安定供給が難しくなった事により代替品を当てたのでは無いかと推察しますが、中国メーカー品では無いところに音への拘りが感じられますね。
初期型標準パーツ
エフェクターやオーディオ用オペアンプと言えばBurr Brown…という位置づけのモノで、一昔前は安価で購入出来たようですが、昨今は偽物も出回り購入時は注意が必要。
新日本無線 JRC NMJ062D
Analog Devices OP275
Limetone AudioさんのYouTube動画の一つに、AssH氏と共にオペアンプ比較をしているものがあります。その動画ではBOSSの歪みエフェクターを使用していましたが、そのエフェクターに合うオペアンプとして選出されたのが、この二つのオペアンプ。オペアンプに対して大した知識もないので、この2種をとりあえず購入してみました。
実験環境について (機材・楽曲)
今回の実験では以下の図の通り、機材を接続しています。ギターアンプの収音には定番SHURE SM57を使用。エフェクターも介さず、チューブプリ VTB1のサウンドをダイレクトに感じ取れる環境を準備しました。アンプのツマミも固定、オペアンプによっては出力の違いが若干ありましたが、VTB1側のツマミの設定はいじっていません。
なお、このマイクプリはかなり歪むため、比較音源も歪んだギタートラックになってしまっています。その点はご了承願います。
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なお、今回の弾き比べてにおいて、ギターサウンドそのものにフォーカスすることに加え、ドラムやベース等のリズムトラックに馴染ませた際の質感について比較しました。
取り上げた楽曲は田村直美さんが率いた新生PEARL (パール) のフルアルバム一曲目を飾った『有名人』。北島健二氏のロック魂溢れるリフにBLUE MURDER (ブルーマーダー、John Sykes率いた3ピースバンド) のリズム隊であるTony Franklin (トニー・フランクリン) とCarmine Appice (カーマイン・アピス)のウネリの効いたグルーヴが絡むカッコ良い一曲です。全パート私が作成しているため、原曲の良さが損なわれず伝わると良いのですが…。
いずれにせよ、結果について一緒にレビューしていきましょう♪
マイクプリ実験結果と考察
まずは前回の真空管比較の動画でおさらい。VTB1をかませていないドライ音もサンプルに含まれるので、先にこちらをチェックすることをオススメします。
YouTube動画で検証
さて、皆さんどうでしたか?
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真空管交換時の音の変化に比べると、オペアンプによる違いは小さい印象。ただし、歪みの質感は確かに変わっており、耳触りに差が出ています。
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それぞれのオペアンプの違いについて詳しくみていきましょう。
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現行品標準パーツ
若干ブーミーな感じが否めませんが、パワフルな歪みが魅力。
パワフルな歪みを好む場合は、メーカー標準である本組み合わせのまま使用するのもアリだと思います。
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新日本無線 JRC NJM042D
現行品標準パーツと同様、パワフルな歪みが持ち味。ただ、ミドルがグッと持ち上がったサウンドで、音のまとまりが良い印象です。現行品標準パーツは複数のオペアンプを併用していましたが、これについてはオペアンプを一種類に統一したことで、音にも纏まりが出たのかもしれません
TS系のブースター的な使い方をする場合は有効なチョイスかもしれません。
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初期型標準パーツ
上記2つに比べると歪みが抑えられ、原音に忠実な音のバランスが得られました。ジャキジャキした質感と真空管特有の温かみのあるサウンドが絶妙にブレンドされ、奥行のあるサウンドが得られています。
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Analog Devices OP275
参考にしたYouTube動画ではハイファイで、ボリューム追従性が良いと評されていました。幅広い音域がグッと持ち上がった結果、コンプ感を感じる質感が得られました。
VTB1現行品と初期型の考察
現行品は真空管とオペアンプの組み合わせからもアグレッシブな歪みが得られるものの、ブーミーな音になる傾向です。その傾向を『真空管特有の温かみ』と感じる人もいるでしょうし、そのままでも十分使えると思います。
一方で、原音への忠実さや音のバランスという観点では、初期型の方が向いており、ボーカル等への適用を考えている人は敢えての初期型入手もアリだと思います。
実験を終えて…
2度に渡り検証してきたマイクプリアンプVTB1。マニュアルの推奨方法に従って使用している割に、正直歪み過ぎです。ここまで来ると、ボーカル録音に使えるか気になるレベルです (笑。また試してみます)。
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個人的にはライン入力用DI…というより歪みエフェクターとしての可能性を感じており、『真空管のような歪みを再現』と謳っているペダルより、いっそ真空管を積んでいる本機を使用した方が求めるサウンドが得られるように思います。特に、ベースとの相性は中々良く、先日作成したギターインストのベーストラックの音作りにも採用しました。
オリジナルギターインスト制作エピソードについての過去記事はこちら。
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ヴィンテージNEVEやその再現を狙った高級機種についても試してみたいですが、是非皆さんもエントリーモデル STUDIO PROJECTS VTB1で遊んでみませんか?