ヘヴィメタル界の人気プロデューサー兼ギタリストが、実力派シンガーを招いて作り上げたプロジェクトのデビュー作。
これまでカントリーポップを中心にCDレビューしてきましたが、私の所有する4~5千枚のCDコレクションの多くはハードロック・ヘヴィメタルだったりします。そんなハードロック好きの私が聴いてきた作品の中でもオススメ作品をいくつか紹介していきますね♪
MAGNUS KARLSSON’s FREEFALL
MAGNUS KARLSSONとは?
MAGNUS KARLSSON’s FREEFALL (マグナス・カールソンズ・フリーフォール) を語る上では、プロジェクトの中心人物であるMAGNUS KARLSSON (マグナス・カールソン) について先ず触れなければなりません。海外のハードロック・ヘヴィメタル好きの方なら、彼の手掛けた作品を耳にしている方も多いことと思います。
MAGNUS KARLSSONのデビュー当時の活動
MAGNUS KARLSSONはスウェーデンで活動するギタリスト・コンポーザー・プロデューサーです。そして、今やヘヴィメタルの大御所バンドの地位を築き上げたPRIMAL FEAR (プライマル・フィア) のギタリストでもあります 。
そんな彼はスウェーデンで生まれ育ち、7歳からギターを弾き始め、バンド活動などを通じ音楽にのめり込む生活を送ります。その後、地元の音楽学校で学んだ後、JOHAS REINGOLD (ヨナス・レインゴールド)、PETE SANDBERG (ピート・サンドベリ) 率いるMIDNIGHT SUN (ミッドナイト・サン) に参加。『NEMESIS』 『METAL MACHINE』の二作をリリースしました。
MIDNIGHT SUNではリーダーであるJOHAS REINGOLDがほぼ全ての楽曲を手掛けていましたが、MAGNUS自身が書き上げた楽曲を形にするバンドとして、自らLAST TRIBE (ラスト・トライブ) を立ち上げます。このバンドには、元ARCH ENEMYのCHRISTOPHER AMOTT率いるARMAGEDDONのシンガーを務めた経歴を持つRICKARD BENGTSSON (リカルド・ベンソン)、現在MESHUGGAHで活躍するスーパーベーシストDick Lövgren (ディック・ロウグレン) が名を連ね、プログレッシブでテクニカルな要素を散りばめられた正統派ヘヴィメタルサウンドで、多くのメロディックロックファンを獲得しました。
プロデューサーとしてのMAGNUS KARLSSON
MIDNIGHT SUNやLAST TRIBEでの活動を通じて、彼の才能を高く評価し、積極的に彼を登用したのが、FRONTIERS RECORDSの創設者であるSerafino Perugino。
創設直後のFRONTIERS RECORDSは、過去の名曲を焼き直し、実力派シンガーに歌わせるようなスタイルが多く見られましたが、2005年あたりから才能あるソングライター・プロデューサーを雇い、現代的なメタルサウンドをベースに実力派シンガーが歌い上げるスタイルにシフト。その流れにのる形で、楽器演奏、作曲、アレンジ、プロデュースすべてをこなすMAGNUSも多くの作品をプロデュース。優れた作品を多数リリースしました。以下が代表的なプロジェクトです。
■ Allen/Lande (Russel Allen, Jorn Lande二人のシンガーとのプロジェクト)
■ Tony O’Hora (元Praying Mantisのシンガーとのプロジェクト)
■ The Codex (元Yngwei MalmsteenバンドのMark Ballsとのプロジェクト)
■ Bob Catley (MagnumのシンガーBob Catleyとのプロジェクト)
これらのアーティストと作り上げた作品の多くは、LAST TRIBEで表現されたプログレッシブかつテクニカルな要素を含む正統派ヘヴィメタルがベースとなっており、アーティストのバックグランドに合わせて、パワーメタルやネオクラシカルな要素を加えられています。これらプロデューサー業を通じて、ハードロック/ヘヴィメタル業界で益々注目される存在となりました。
そして、現在もFRONTIER RECORDS関連作品のプロデュースを継続。昨今では自身もメンバーとして名を連ねるTHE FERRYMEN (ザ・フェリ-メン)、Allen/Olzon (アレン/オルゾン) の作品をリリースしたことも記憶に新しいですね。
そういったプロデュース業と並行して、MAGNUSが力を入れている活動の二つが、① PRIMAL FEARのギタリスト・コンポーザー、② 自身のプロジェクト FREEFALL となります。
PRIMAL FEARでの活動
MAGNUSは2008年、RALPH SCHEEPERS (ラルフ・シーパーズ) やMAT SINNER (マット・シナー) が率いるジャーマンメタルバンドPRIMAL FEARにギタリストとして加入 (さらに、2010年にはALEX BEYLODT (SILENT FORCEやVOODOO CIRCLE他多数で活躍) も迎え入れられ、ギタリスト・コンポーザーだらけのバンドになっています)。その後、MAGNUSはメインコンポーザーの一人として、多くの楽曲を手掛け、現在の重厚かつメロディックなPRIMAL FEARのサウンドプロデュースの一翼を担っています。なお、PRIMAL FEARの作品には、ギタリストとして一曲参加した『New Religion』含め計7作品に携わり、2年の1度のペースで作品を届けてくれています。
※現在はプロデューサー・コンポーザーとしての活動に専念するため、ツアーには参加せず、作品を作るためのメンバーという位置づけです
MAGNUS自身のプロジェクト 『FREEFALL』
LAST TRIBEが活動休止状態に入って以来、プロデューサー業に勤しんできたMAGNUS。2013年、遂に自身のプロジェクトとして『FREEFALL』を立ち上げます。このプロジェクトはFRONTIER RECORDS所属のシンガーを中心にゲストとして迎え、数曲ずつ歌ってもらう形式です。また、本プロジェクトの大きな特徴としては、MAGNUS自身もシンガーとして数曲その声を聴かせてくれていること。稀代のロックシンガー達が歌う楽曲群の中でも劣ることのない、素晴らしい歌唱を聴かせてくれています。
今回取り上げるのは、そんなFREEFALLの1stアルバム。タイトルはずばり 『MAGNUS KARLSSON’s FREEFALL』。今作を作り上げるにあたり、共同制作を行ったDANIEL FLORESもハードロック/ヘヴィメタル界の重要人物。Mind’s EyeやThe Murder of My Sweetでの活動に加えて、First SignalやFind Meなどを手掛ける実力派プロデューサー兼ドラマーとして知られています。そんな実力派の二人がタッグを組み、作り上げた楽曲リストとゲストシンガーについて見てみましょう。
1. Free Fall
(Vo:Russell Allen)
2. Higher
(Vo:Ralf Scheepers)
3. Heading Out
(Vo:Magnus Karlsson)
4. Stronger
(Vo:Tony Harnell)
5. Not My Saviour
(Vo:Rick Altzi)
6. Us Against the World
(Vo:David Readman)
7. Our Time Has Come
(Vo:Mark Boals)
8. Ready Or Not
(Vo:Magnus Karlsson)
9. Last Tribe
(Vo:Rickard Bengtsson)
10. Fighting
(Vo: Herman Saming)
11. Dreamers And Hunters
(Vo:Mike Andersson)
12. On Fire
(Vo:Magnus Karlsson)
13. Stronger(Acoustic Version)
(Vo:Magnus Karlsson)
ゲストシンガーには、これまで共に素晴らしい作品を作り上げたパートナーが名を連ねていることが分かりますね。今作では、事前にゲストシンガーを選出。それぞれのシンガーの魅力を活かすための曲作りを行ったとのこと。そのプロデューサーとしての目利き、手腕が功を奏し、素晴らしい作品に仕上がっています。
さらにマニアックな話と、FREEFALLの新作
Magnusは一つの楽曲を作り上げるまでに、何度もメロディやアレンジを見直し、改良に改良を重ねるスタイルで作品を作り上げているそうです。そんな彼だからこそ作り上げられる、魅力的なメロディ・刺激的なアレンジがファンの心を掴み続けています。
そんな彼も、立て続くプロデュース業で、若干のネタ切れ・マンネリ感も否ませんが、自身の名前を関したFREEFALLでは上質なメロディが維持され、ハイクオリティな楽曲が多数収録されています。特に、PRIMAL FEARのようなパワーメタルと言うよりは、正統派メタル寄りの音楽性。加えて変拍子を活かしたアレンジはLAST TRIBEを彷彿させる仕上がりです。
2020年、PRIMAL FEARの新作『METAL COMMANDO』もリリースされたことについて触れましたが、実はFREEFALLでも新作『WE ARE THE NIGHT』をリリースしています (MAGNUSは働き者ですね…)。
この新作では、本記事で紹介した1stアルバムとは異なり、MAGNUSが書きたい楽曲を揃え、その楽曲に合うシンガーを後で選出したようです。そういった事も関連してか、FRONTIER RECORDSがプッシュする若手シンガーを中心にゲスト参加。1stアルバムとも異なる作品として仕上がっています。